唐津焼の特色として、素材に対する強いこだわりがあげられます。
他産地では効率化されて分業が進んでしまった各工程を、自ら一貫して行なっている作家が数多く活動しています。原料を近隣の山から採取し、石を砕き、水簸し、混練し陶土となし、釉薬には自然の植物を燃やした灰を使います。造形、絵付、施釉に際しても素材の魅力を引き出すことを心がけ、登り窯を自ら築き、薪による焼成を試みるということも一般的に行なわれています。
分業ではなく一貫して作家が手がけるため、決して効率のよい仕事ではありませんが、釉薬や加飾、造形に豊かなバリエーションを持つ古唐津を手本とし、素材にこだわった個性ある焼き物には、完全な複製技術を前提とした現代のプロダクトにはみられない、無二性を持った魅力が備わっています。
唐津焼の魅力はその土にあります。古唐津の諸窯もその造形や土の表情に特徴があり、様々な原料が使われていたことを物語っている。 ※土見せ(つちみせ):素地が露出している部分。 高台は唐津焼の見所の一つ。 |
回転する天板と軸棒、また重みのあるはずみ車からなり、古くは人力を動力にしており、現在は電動のものが一般的。唐津ではずみ車を足で蹴って惰性を得る蹴ろくろも現役で使われている。 ※たたき【叩き】技法 壷や甕などの袋物を作る際、内側に当て木を当て、外側から叩き締めて作る方法。練り土を輪積みして重ね叩き締めることで大型のものも作ることが出来る。ろくろを併用して作る場合もある。 |
土の表情を見せるための、自然な削り。 |
絵付けや釉薬を掛ける場合、低温(800℃前後)で焼成する場合がある。 |
鉄による絵付けは焼き上がりで黒または 茶に発色。 |
釉薬は植物の灰や鉱石、鉄などを混合し、水に溶かしたもの。原料によって色の違いがある。乾燥もしくは素焼きした素地を浸したり、素地にひしゃくで掛けるなど形状によって色々な方法をとる。 |
ひとつひとつ丁寧に詰めていく。各々詰め方にこだわっている。 “焼き”ための大事な作業。 |
伝統的登り窯(※)ガス、電気窯などで1250~1300℃の高温で焼成。焚き方によって焼き上がりの色が変化する。 |
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薪窯の一種で、斜面に築かれる。構造・大きさは多様だが、燃焼効率の良さから大量生産に向いている。日本では十六世紀末頃から肥前陶磁研究所地域を始めとして、効率のよい登り窯が主流となっていった。1300℃以上の高温まで温度を上げることが可能。 |
※登り窯 |
協力者:佐賀大学「ひと・もの作り唐津」プロジェクト
田中右紀教授・スタジオシロタニ・井上千晶・遠藤健之・矢野直人・ 山口明・城雅典・瀬戸口朗子 |